25年のツアー経験を活かして。旅行会社からホテルマネージャーへの挑戦【ホテルスタッフインタビュー】
- Holidayキャリア

- 1月8日
- 読了時間: 9分
更新日:1月15日
こんにちは!Holidayキャリア編集部です。今回は、25年間の旅行会社での経験を活かし、長野県にある温泉宿「戸倉上山田温泉 玉の湯」でマネージャーとして活躍する、茂森 優子さんにお話を伺いました。
旅行会社で25年間、ツアーの企画や添乗、地域活性化に携わってきた茂森さん。50歳を目前に「地域のために今までの経験を活かしたい」と、温泉旅館への転職を決意されました。新天地での挑戦や、温泉旅館が抱える課題、そして観光業界の未来について、たっぷりとお話を聞かせていただきました。
25年の旅行会社経験を経て

──まずは簡単に、これまでのご経歴を教えていただけますか?
1998年に東京のクラブツーリズム株式会社に新卒で入社し、昨年まで25年間勤めていました。主に国内外の団体向けパッケージツアーの企画造成と販売を担当し、ツアーの添乗員としても様々な場所へ行かせていただきました。
最後の3年間は地域共創事業部という部署で、観光庁の観光活性化事業等に携わり、全国の自治体と一緒に地域課題の解決に向けて取り組んでいました。そして昨年4月に長野県の千曲市に移住し、5月から新しい仕事を始めて、ちょうど今で半年ほど経ったところです。
──25年間というのは本当に大ベテランですよね!そんな中で長野のホテルへの転職を決められたきっかけは何ですか?
「どうしていきなり来たの?」とほぼ全ての方に驚かれるんです(笑)。まず一つのきっかけは、一昨年、長年働いてきた旅行会社で勤続25周年を迎えたことですね。その時にふと立ち止まって考えたんです。これまではほとんど自己実現のために働いてきたけれど、50歳を目前に、これからは自分のためだけではなく、人のため、地域のために今までの経験を活かせないかなと。そんな気持ちが芽生えた時に、もともと人脈があった長野県の事業者の方から一緒に仕事をしないかというお話をいただいて。思い切って転職を決意しました。
──なるほど。クラブツーリズムでは添乗員としての経験もおありなんですよね。
はい。販売を行うと同時に、実際にお客様と接する機会もたくさんありました。個人的にはツアーの販売もとても楽しかったのですが、いろんなお客様に接して自分自身も幸せな気持ちになれることが自分の強みだったんです。
新しい職場でもただキャリアを重ねるだけではなく、リアルにお客様と関われる仕事がしたいと思って、旅館業はぴったりだと感じています。
マネージャーとしての新たな挑戦。「スタッフ同士のコミュニケーションが大切」
──現在はどのようなお仕事をされているんですか?
「玉の湯」という温泉旅館のマネージャーとして、マネジメント面と、宿泊客へ接客も携わっています。半年が経って、今はホテルのグループ全体の経営に関する取り組みにもありがたいことに携わらせていただいているような状況です。小さな仕事から大きな仕事まで、幅広く担当させていただいています。
──ホテルに転職されてすぐにマネージャー職になられたんですか?
そうですね。それを条件に転職しました。来て早々に、宿泊プランを新しく造成したりなど、これまでの経験も活かせていただいています。ツアーでは宿泊施設と付き合うことも非常に多かったので、今度は送る立場ではなく、受け入れる側の立場として仕事をしています!
マネージャーとして特に大切にしているのが、スタッフの皆さんとのコミュニケーションですね。
──スタッフの方々とコミュニケーションを取るのに意識していることはありますか?
お客様から「この料理が美味しかった」「あのスタッフの対応が良かった」といった声をいただいたら、必ずスタッフに伝えるようにしています。実は80代のスタッフがいらっしゃるんですが、その方が時々お客様に地元の歌を披露してくださるんです!そういった温かいエピソードの共有も大切にしています。
──素敵です!幅広い年齢層のスタッフがいらっしゃるんですね。
10代の方から80代の方まで、本当に様々な年齢層のスタッフがいます。それぞれのスタッフのポテンシャルを把握しながら、どうやったら皆さんがやりがいを持って働ける環境を作れるのか、まだ着任して半年ほどなので、日々コミュニケーションを深めながら試行錯誤しているところです。
仕事終わりに星を見たり山登りも。今の環境だからこそできる茂森さんの働き方

──以前と働き方で変わった部分はありますか?
実は大きく変わりました。以前の東京での生活では日々がむしゃらに働いていて。一時は片道2時間もかかる通勤を経験したんですが、今はその時間を別のことに使えるようになりました。
例えば、夏は仕事が夜9時に終わったら、そのまま上高地に行って、泊まって山登りをしたりとか。
──今の環境だからこそ、仕事とプライベートの両立ができているんですね!
これまでの長い通勤時間から解放され、自宅も職場まで徒歩数分の距離となり、自分の時間がたくさん持てるようにもなりました。今は仕事と趣味のメリハリをつけやすい環境です。
──長野県千曲市を選ばれた理由について教えていただけますか?
実は私、生まれ育ったのが北海道なんです。小学生くらいまでそこで過ごしていた影響もあってか自然がすごく好きなんです。東京の旅行会社で働いていた時も、休みの日は山登りに行ったり、アウトドアを楽しんだりしていました。
千曲市から車で少し走れば、大自然の様々なフィールドへ遊びに行くことができるのが魅力でした。
──自然が身近にある環境で育ったんですね。
そうなんです。だから今の環境は、自分にとって天職かもしれません!これまでのがむしゃらな働き方をリセットして、仕事だけでなく自分の趣味も満喫できるフィールドで働きたいと思っていました。この千曲がまさにぴったりだったんです。これまでの東京での生活では考えられなかった贅沢な時間を過ごせています。
ほぼ毎日温泉が入れる環境と、のどかな町の雰囲気に癒され、心も身体も健康的に過ごせています。
温泉宿のお仕事のやりがいと喜び
──業務をしていて、一番やりがいを感じるのはどんな時ですか?
やはりサービス業なので、「ありがとう」と言っていただけるのが一番のやりがいですね。特に当館のコンセプトに共感して来てくださるお客様が満足していただけた時は本当に嬉しいです。
例えば、ご高齢のお客様や、お体が不自由で今まで温泉を楽しむ機会が少なかった方が、温泉付きの客室や個室での食事で、気兼ねなく癒しの時間を過ごしていただけた時。また、ご家族の記念日に当館を選んでいただいて、「素敵な思い出になりました」と言っていただける瞬間は、本当に嬉しいです。何より、その喜びをスタッフの皆さんと分かち合える時が一番楽しいです!
インバウンド対応と語学力の向上
──最近はインバウンドのお客様も増えていると思いますが、多言語での対応は多いですか?
最近増えてきています。実は当館には台湾出身の若いスタッフが何人かいまして、彼女たちの存在がとても心強いんです。英語と中国語の両方ができるので、外国人のお客様への対応で頼りにしています。
──スタッフの方の語学力、心強いですね!茂森さんも何か勉強はされているんですか?
私自身も日々語学力の向上に努めています!スマートフォンのアプリを使って勉強しているんですが、毎日10分程度と決して長くない時間です。特に中国語は最初こそ苦戦したものの、続けているうちに面白くなってきました。
また、外国人スタッフの採用も積極的に検討していて、アジアの方々とオンラインで面接をすることもあります。これからの温泉旅館には、多言語対応のできるスタッフが必要不可欠だと考えているんです。
温泉旅館が直面するリアルな課題
──実際に温泉旅館で働かれてみて、課題に感じていることはありますか?
この温泉地で働いてみて、本当に多くの社会的課題を目の当たりにしています。特に深刻なのが人材不足です。このままでは日本の大切な文化である温泉旅館がどんどん減ってしまう。その危機感から、同じ課題を抱える全国の温泉旅館の方々とつながり、共に解決策を見出していきたいと考えています。
──温泉旅館同士の連携は現状どうなっているんでしょうか?
実際には、まだまだ地域内で完結してしまいがちなんです。でも、それぞれ環境は違えども、多分同じような課題を抱いているところは多いと思うんです。お互いの成功事例や課題を共有できるようなプラットフォームができたらいいなと思っています。
それと、私のように首都圏で働いていた人たちにも、温泉旅館で働くきっかけを提供できればと。実際、長野県内だけで温泉旅館の担い手を育てていくのは難しい。でも、首都圏で働いている人の中にも、地方で新しいことにチャレンジしたいと思っている方は潜在的にいるはずなんです!
──地域の枠を超えた取り組みが必要ですね。
そうですね。地域活性化の一環として、最近では地元の高校生とも関わる機会がありました。長野県はキノコが有名なんですが、高校生がキノコ料理を新しく開発するコンテストがあって、そこの審査員を務めさせていただいたんです!優勝者の考案したメニューを当館でも提供することになりました。このように観光客と地元の若者をつなぐ、そんな架け橋になれればと思っています。
これからホテル業界を目指す人へ、茂森さんが伝えたいこと

──最後に、ホテルで働くために必要なスキルや心構えについて教えていただけますか?
やはりホスピタリティが大切です。しかもこれはお客様に対してだけでなく、一緒に働く仲間に対しても必要なんです。ホテルはいろんな立場のスタッフがいるので、柔軟な対応力と人間力が求められます。
──働く仲間のことも考えられる人が求められますね。他にも必要なことはありますか?
ホテルは地域の顔の一つだと思うんです。だから、その土地の歴史や食文化についての知識も必要です。これは私自身も日々勉強中なのですが、お客様にちゃんと地域の魅力を伝えられるような知識を、少しずつでも備えていく必要があります。
それと、自分のためだけじゃない働き方ができる人が向いているかもしれません。お客様に喜んでいただく、そして一緒に働く仲間たちとその喜びを分かち合える。そこにやりがいを感じられる人が、この仕事に向いているんじゃないかなと思います。
──茂森さんの温泉旅館やホテルの未来に向けた熱い思いが伝わってきました。本日は貴重なお話をありがとうございました!
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